2009年1月11日日曜日

理学部出身のS准教授

「理学部出身者は原理とか理解していて、工学部出身者よりもよく考えている」
というように聞こえる言動をするS准教授が居る。

S准教授が、
「化学者は何でも”よく分からないこと”に押し込めてしまう。Van der Waals力もそうだ。」
というようなことを言った。

Van der Waals力については、どこかの文献で、
原子核とその周囲の電子の位置が揺らいでいて、どんな分子にも瞬間的には双極子が生じており、二つの分子が存在すると、互いの双極子の間に、電磁気力が生じるために、二つの双極子の向きが互いに無関係でなくなり、互いのプラスとマイナスが近い位置になっている確率が高くなり、従って静電引力のために引力が生じる・・・
というようなこと、そして
それを数学的に(すべての分布確率を積分して)取り扱うと、二つの分子間の距離rに対して、rの-6乗に比例する引力や、rの-12乗に比例する引力が導出される・・・
というようなことを読んだことがあった。

それで、
「Van der Waals力については(ある程度)理由が分かっていますよ」
というようなことを言ったら、説明してみなさいというようなことを言われた。上記のようなことを説明すると、
「双極子の考えられる位置をすべて積分すると、その間に働く力は0になりますよ」
みたいなことをS准教授から言われた。

そこで、
「お互いの分子の双極子の向きが無関係なら積分したら、その間に働く力は0になるかもしれませんが、向きが無関係にはならない。互いのプラスとマイナスが近い位置になっている確率の方が高い。」
と言った。

すると、なぜ、確率が高くなるのかを聞かれた。
「なぜって、マイナスとプラスの間に静電引力が働くからですよ。引力が働けば、引き合って近くに来ますよね。」
と言った。しかし、S准教授は理解されない。この人はバカではなかろうかとさえ思ったが、
「静電引力さえも、その理由を示せということですか?」
と問うと、クーロン力が働くのは前提にしても良いとのこと。

それで、
「じゃぁ、なぜ、Van der Waals力が働くのか、(S准教授)先生が知っておられることを説明してください。」
と問うと、
「簡単には説明できないんですよ。材料開発工学専攻の中で分かっているのは()先生と()先生と、あと()先生も知っているかもしれないなぁ」
とごまかしながら、さも自分たちは理解しているんだと嬉しそうに私をバカにする。
「私の理解力と勉強が不足しているので、先生が説明しても私が理解できないのでしたら、そう言ってください。」
と言うと、
「絶対零度なら・・・」
とか説明を始められるが、結局要領を得ない。
さらに問い詰めると、
「結論として、Van der Waals力は”よく分からない”力なんですよ。」
と言われる。
「そんなの卑怯ですよ。」
と言っておいた。

職場に戻って調べると、
wikipedia: ファンデルワールス力
が見つかった。やはり、私がS准教授に説明したようなことが書いてある。
さらに
wikipedia: ロンドン分散力
には、ロンドン分散力についても記されていて、そのオリジナルの論文
F. London, "The general theory of molecular forces", Trans. Farady. Soc. Vol.33(1937), p.p. 8–26
も記されていた。このことをS准教授にメールで連絡しておいた。

どうも、S准教授は自分以外の人をバカにする傾向がある。

以前、ある分子が会合してかなりの数の分子が集まって微小なドメインを形成し、そのようなドメインが溶媒中に多数分散していると期待される系に関して、
他のT先生から、微小なドメインの大きさを測定できないかと聞かれ、
DLSによる測定を行った。
他にも、京大のS先生に相談して、SLSによる測定を薦められ、T先生にそれをお勧めした。
T先生はS准教授にも相談され、S准教授はそのようなドメインの大きさをSLSでは測定できないと提言されたらしい。
そこで、私がS准教授と相談した。
S准教授はなぜそのような大きさが測れるのか私に説明を求められた。
そこで、誘電率一定の分子が集まって領域を作っている場合には、その散乱強度はその領域の占める体積の二乗に比例する・・・から説明を始めた。
全部書くと長いので割愛するが、私の説明で、ドメインに含まれる分子の濃度が一定の場合、光の散乱強度の絶対値がドメインの大きさに依存することが示された。
しかし、S准教授は、私の説明の最初の部分から否定された。
1分子が示す双極子の散乱強度の式から、それの濃度が同じであれば、全体の散乱強度は一定になるというようなものだった。
S准教授は教科書に載っている誘電率の式を固辞されたが、どうやらその式の前提になっているものが間違っていると思えたので、「その式は、今検討している条件で正しいのですか?」と問うと、「教科書に載っている式を疑うのはおかしい。」と言い返され、議論は平行線になってしまった。
結局、若輩の私の言うことよりもS准教授の言うことの方がT先生には正しいように思えたようで、私が間違っているかのように思われてしまった。
残念でならない。

他のT先生が、「科学とは既存の知見に対するアンチテーゼを提案して検証することで知を切り拓くものだ」というようなことを言っておられた。
S准教授の下で働いていたら、科学なんかはできないだろう。

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