2020年6月2日からこの文章は書いていますが、ほとんど推敲していない、思いつきをそのまま記しているので、読みにくく、勘違いされやすい表現になっている可能性があります。また、冗長で不要な文や箇所が多いかもしれません。適宜、書き直していきます。
「森林はCO2を吸収しない」と公言している教授が居ます。その罪について記します。
なお、「CO2」と記していますが、本来は「2」は下付きにするべきです。このブログでは、下付きにするのに手間がかかるので、下付きにせずに、記させてもらいます。
「森林はCO2を吸収しない」という言葉は、悪いです。罪な言葉です。誤解される可能性が高く、誤解された場合に、CO2を増やす行動を、誤解した人々が起こす可能性があります。
正しく理解していない人が聞くと、「森林がCO2を吸収していないのだから、森林を守る必要はそれほどないのではないか?
」と思ってしまう可能性があります。つまり、「森林を伐採して、木材を燃やして、ビルなどを建てても、CO2を増やさないのではないか?」と勘違いしてしまう可能性があります。
言葉というものは、発言者の意図とは関係なく、違った意味に捉えられる可能性があります。
本当に善良でそして賢い人は、誤解された場合に、問題がある事態を発生させる危険性があるような、そんな言葉は、発しないはずです。
この教授は、敢えて、多くの人々の関心を引くためにか、得てして、狙ってわざと誤解されるようにしたかのような、センセーショナルに見える・聞こえることを書くことが多く、私はその手法を嫌っています。
この「森林はCO2を吸収しない」と記している教授の主張を以下に引用します。
「その理由は2つある。
1) 一本の樹木の体は吸収したCO2でできる。だからCO2を吸収するが、枯死すると微生物が分解してもとのCO2に戻る。これを「自然の持続性」と言う。
2) 森林は、その面積が同じである限り、今日、誕生する樹木と今日、枯死する樹木は同数だから、全体としてはCO2は吸収しない。」
ただし、補則として、
「3) ただ、例外がある。枯死するときにたまたま水の中に落ちたり、砂嵐が来たり、また海の植物プランクトンが海底に沈んだりして、酸素と触れない場合は、植物の炭素はそのままどこかに蓄積してしまう。
4) 地球の長い歴史では、CO2は「例外」によってすこしずつ減少してきた。かつてはCO2ばかりだった大気は、すっかりCO2が無くなって、最初は少なかった窒素と、CO2からできた酸素になった。」
とも記されています。
当たり前ですが、森林を伐採して含まれる樹木を燃やすと、CO2が発生します。同じ重量の木を燃やす場合と、微生物が分解する場合を比較すると、燃やす場合のCO2発生速度は、通常、微生物による分解によって発生する速度よりもはるかに高くなります。
2)に「森林は、その面積が同じである限り」と記されていることに注意が必要です。森林(厳密には、森林に存在する木の総重量)が増えれば、それだけ、二酸化炭素が吸収されたことになります。厳密には、水や他の成分も吸収されて木の総重量が増えるので、二酸化炭素の吸収された重量と、木の重量の増加は等しくはなりませんが。
また、「吸収する」というのが、CO2の吸収量からCO2の放出量を差し引いた、「正味の」吸収量を意図していることにも注意が必要です。
物質収支を正しく理解している人ならば、
地球の大気中のCO2の量について、
増加量 = 大気への流入量 - 大気からの流出量 + 大気中の反応による生成量 - 大気中の反応による消失量
という関係を理解できているでしょう。上式の「量」は単位時間あたりの量(もしくは変化)と考えることができ、そうすると、たとえば「増加量」は「増加速度」に置き換えられます。
森林中の炭素原子の量について
増加量 = 森林への流入量 - 森林からの流出量 + 森林中の反応による生成量 - 森林中の反応による消失量
も成り立ち、森林への流入量には、植物が吸収するCO2による寄与も含まれます。植物であっても、呼吸によってCO2を排出することは多くの方がご存知でしょうけど、それは森林からの炭素原子の流出量に寄与します。
たとえ、植物の成長による二酸化炭素の吸収と、植物の有機物の分解による二酸化炭素の生成がつりあっているとしても、植物の光合成が止まると、二酸化炭素の発生量(速度)が増加します。つまり、植物の光合成の速度を下げる(妨害するなど)ことをすれば、大気中のCO2の増加速度が増えます。
大気中の二酸化炭素の量を増やさないためには、森林・植物を大事にする(維持する)必要があるのです。「森林はCO2を吸収しない」という言葉は、百歩譲って、もしも正しいとしても、言ってはいけない言葉なのです。もしも言ったり記したりするのならば、直後に続けて、「ただし、森林を伐採して燃やしたりすれば、CO2が多く発生する」ということを言うべきなのです。
そのような「森林はCO2を吸収しない」という表現の危険性を認識できていないということが、この教授の能力の限界(低さ)を示していると思います。
私が知る限り、ほとんどの植物は、成長するときに、外界から二酸化炭素を吸収し、光合成によって、炭水化物を合成します。つまり、二酸化炭素を外界から取り入れて、二酸化炭素以外の有機化合物を形成します。そのほとんどが、植物の体の構成要素となる、セルロースに変換されます。
この教授は、「森林で、植物の分解によって二酸化炭素が発生する速度が、植物の成長によって二酸化炭素が吸収される速度と釣り合っている」ということを前提にして「森林はCO2を吸収しない」と記しているようですが、いったい、この言葉を聞いた人の何割が、そんな前提条件に気づくのでしょうか?
ただし、一つだけ、良い点を記しておきます。
このような「えっ?」と思わせることを記して、興味深いと思った読者に内容を読んでもらうことで、 読者の理解が深まるという効果はあります。
さらに蛇足です。
日本は、降水量が多く、放っておけば、そこら中から植物が生えてきます。植物が生えてきたとき、みなさんに思って欲しいです。この「植物の大半は、二酸化炭素を吸収して作られたのだ」と。
森林が伐採されて、立派な街が形成されたときに思って欲しいです。「この街にあった植物はおそらく、燃えて、二酸化炭素の増加を引き起こした。また、以前存在した植物が吸収していた分の二酸化炭素が吸収されなくなった」のだと。
とは言え、「森林を開墾するな」と言うつもりはありません。人間の幸せが一番です。
「二酸化炭素を増やす行動をすべて控えろ」なんて言うつもりも毛頭ありません。
「森林を伐採して燃やしてしまっても大気中の二酸化炭素は(それほど)増えない」という間違ったことを、よく分かっていない人に感じさせてしまうという危険性について指摘したかっただけです。
さらに蛇足を。
森林が分解されて、二酸化炭素に戻っていることは起こっています。そして、同時に、森林が二酸化炭素を吸収することも同時に起こっています。そういう意味では、森林はCO2を吸収し続けているのです。
また、森の面積が増える、つまり木の全体重量が増えれば、それだけ二酸化炭素が吸収されたことになります。