2014年6月7日土曜日

思考する─だまされるな!その3

今回は息子が見つけてくれたものをご紹介。

『小学生/中学生・知の祭典 算数オリンピック問題集(2013年度版)』の476ページに、
11年度の「ジュニア算数オリンピックトライアル問題」の「問題7」がある。
それは次のようなものだ。

「あるロボット工場では,A型とB型の2種類のロボットが作られています。A型ロボットは大小を1<2<3<4<5と認識します。一方で,B型ロボットは大小を1>2>3>4>5と認識しています。いま,5体のロボット,マーク,ケン,ジョン,サムス,タロウがいます。それぞれのロボットはA型かB型のどちらかで,1~5の番号がついています。

マーク:ワタシはもっとも大きい数字がついたロボットです。

ケン:ボクより大きい数字のついたA型ロボットと小さい数字のついたA型ロボットがいます。

ジョン:ボクにはもっとも小さい数字がついています。

サムス:ワタシより大きい数字のついたA型ロボットはいません。

タロウ:ボクの次に大きいロボットはA型ロボットです。

それぞれのロボットの種類とついている数字を求めなさい。」

息子は上の問題を解こうとして、彼らの言葉を全て満たすことができないと言って、困っていた。

息子は次のように考えていた。

5体のロボットのそれぞれの数字は全て異なる。(同じ数字のついたロボットは居ない。)

マークとジョンの言葉から、マークがA5でジョンがA1なのか、もしくはマークがB1でジョンがB5であるかのどちらかである。

さらにサムスの言葉から、マークがB1でジョンがB5であることが確定する。

さらにケンの言葉から、サムスとタロウはA型ロボットであり、ケンの数字が3であることが分かる。サムスの言葉を思い起こせば、サムスがA4、タロウがA2であることが分かる。

ここまで、つまり、タロウの言葉を無視すれば、矛盾が無い。

しかし、 タロウの言葉を、「ボクについている数字より次に大きい数字のついたロボットはA型ロボットです」と解釈し、「次に大きい数字」というのが、一つだけ小さい数字という意味ならば、数字の1がついたロボット、すなわちマークはA型ロボットでなければならず、マークがB型ロボットであることと矛盾する。

以上のように私も考えた。

そこで、この矛盾をなくすために、私は、
タロウの「ボクの次に大きい」というのは体格が大きいという意味である
とか
タロウは嘘つきである(もしくは故障している)
とか
そもそも、同じ数字のついたロボットが居る
とか考えたのだが、そのようにすると、答えが一つに定まらない。

これは答えが一つに定まらないということで、本に書いてある答えを家内に読んでもらったら、答えには
「正答率100%
問題に不備がありました.
『タロウ:ボクの次に大きいロボットはA型ロボットです.』の部分が,正しくは『タロウ:ボクの次に小さいロボットはA型ロボットです.』の間違いでした。
「大きい」のままでは解答が出ない問題となってしまうため,この問題については全員に得点を与えることとしました.」
と書かれていた。

問題がおかしいことに気づいた息子を褒めてやった。

正しく思考すれば、騙されない。

2014年6月1日日曜日

思考する-だまされるな!その2

ティエラオープン模試(2014年5月31日)の小学生5年向けの理科の□4番の(3)の答えがおかしいと思う。

問題は次のようなものだ。

□4 空気や水の性質を調べる実験について、あとの問いに答えなさい。
[実験1] 図1のように、20mLの空気をとじこめた注射器のピストンを押した。

<鈴木が中略>

(3) 注射器の中の空気の体積が15mLになるようにピストンをおした状態で、注射器の向きをいろいろ変えました。次のうち、ピストンをおす手ごたえが最も大きくなるのは、注射器の先をどちらに向けたときですか。1つ選び、記号で答えなさい。
ア 真上  イ 真横  ウ 真下  エ どちらに向けても変わらない。

以上が問題の文章。
図1には 注射器(外側の筒に、先端にゴムらしきものがついたピストンが刺さっていて、先頭のゴムと注射筒に囲まれた部分に空気が入っていて、注射器の先にはゴム管が付いていて、そのゴム管は途中でピンチコックで閉じられている。筒とピストンは水平に描かれている。

能力開発センターの答案には、「エ」が正解とされているが、常識的に考えれば、「ア」が正しい。
常識的に考えるというのは、次の状況を仮定するということだ。すなわち、重力があり、また特に問題文に記されていないので、ピストンには質量があるということだ。
また、「ピストンをおす手ごたえ」というのは、「注射器の筒が固定された状態で、ピストンを静止させるために、ピストンに接触している手からピストンに対して加えられる力の大きさ」という意味だと考えるべきだろう。

問題作成者の意図は分かる。空気を押し縮めると圧力が上がること、その圧力の大きさは、向きによらず一定であることを問いたいのだろう。
「ピストンの質量は無視してよい」とか、「重力の影響は無視する」とかの但し書きを付けるべきだったのである。

ちなみに、常識的に考えると、水平状態で20mLの空気が入っている場合のその空気の圧力と、注射器の外側の空気の圧力は同じだろう。
注射器のピストンを外側の空気が押す力も考慮すべきであることは言うまでも無い。