未知のものを探求するというのは面白い。
未知のものなので、そこには当然失敗が付きまとう。
しかし、最近は効率主義だ。失敗しないこと、いかに、最小限の労力で最大の利益を得るかが重要視されている。こうなったら、創造力は減るだろう。
指導している学生さんからもよく言われる。「成功する実験方法を教えてください。」
そんなもんが分かっている研究はあまり魅力的ではない。
でも私が指示した実験が失敗すると、「あの先生は無能力だ」と言われる。
まぁ、その通りだろうけど。
(実験に「失敗」なんてものは無いという話もあるのだが、それについてはここでは述べません。上記の「失敗」というのは「予想通りにならなかった」と読み替えていただいた方が良いでしょう。)
パソコンの分解イベントを行っている。
大学で廃棄されたパソコンを回収し、使えそうなものは組み替えたり修理したりして使うが、どうしようもないもの(低スペック過ぎるものや、故障品)は、元気プロジェクト祭りで、子供たちに分解してもらっている。
中身を見るのは楽しいのだ。
そして、組み直してみて、元通り動作するのも楽しい。
どのような仕組みになっているのかを見れば、そこから知識が増える。
場合によっては、他のものを取り付けることで、故障が治ったりする。
故障して写らない液晶モニタを学生さんが、四苦八苦しながら、自分の力で修理したのを横で見させてもらって、本当に感動した。(2010/1/23追記:私にも彼にも最初は無理なことでした。彼はまさにその場で成長し成功したのです。)
分解して、ネジが余ったりするが、無事に元通り機能したりする。
知り合いの先生とお話しさせていただいたら、
「子供のころはとにかく回りのものを分解して組み立てまくってみた。
ネジが余っても、元通り動いたりして、無駄なものが何と多いのかと気づいたりした。
しかし、最近は難しくなりすぎて、分解しても面白くない。
どうなっているのかが分からないのだ。」
とおっしゃっていた。本当にそう思う。
「どのようになっているのかは分からないが、使いこなせる」ということだけに自尊心を持っているというのはむなしい。でも、社会はそのようなことを目指しつつ有る。
MicrosoftWindowsのOfficeSpecialistや、ウィルスの蔓延にも、似たような現象が関わっているように思える。
LinuxでUbuntuを使っているときの楽しみにも、似たようなものがある。
壊れるかもしれない。でも、分解してみたい。どのように動作しているのか、知りたい。
それで、危険なコマンドを平気で実行する。壊れても、復旧は簡単にできるようにしてある。
そのような環境が周りにあることが大事だと思う。
壊しても良い環境。(意味を勘違いされると非常に危険ですが。)
でも、LinuxのUbuntuフォーラムでも、「初心者には危険なコマンドを教えるな」という雰囲気がある。残念だ。
「何のために勉強するのですか?」という問いにも、関係していると思う。
昔、NHKの番組で鈴木さんと言う人が言っていたのをうろ覚えしている。
”知ることが楽しいから。”・・・まさに、それなのだ。
大学ってそんなもののためにあるのではないのか。
なのに、最近は、「良い大学に入るため。良い企業に就職するため。」・・・ダメだ。こんなんじゃ。
3 件のコメント:
tncさんへ
おおおお・・・とても嬉しいです。
すごく共感させていただきました。
上記のご投稿をくださり、有難うございました。
結果を得るまでの道のりが異なることに、楽しみが見出せれば良いのですが。
でも、教育に問題があるのかもしれません。
ある先生が、「高校までの教育では、数学の問題を解く場合にでも、色々な方法があることを認めるのではなく、
このように解けば効率的に解けるという一つの決まった方法を全員に教えるらしい」と言っておられました。
真偽のほどは分かりませんし、学校や先生によって異なるのでしょうけど、授業時間数が制限され、親からは有名大学、有名私立に何人合格させたか?とか睨まれれば、上記のような教え方が横行するのも理解できます。
私なんか、教えられても、わざと、「教えられた方法以外の方法で解いてやろう」、なんて、ひねくれていましたから。
昨日、TVで芸能人のもっとも知能の優れた人を決めるようなクイズ番組をやっていた。数学の問題ということで、
「ピタゴラスの定理を別名、何というか?」なんて問題があった。
そんなもん、数学の問題か?
暗記じゃないか。
「三平方の定理を証明しろ。」なら、数学の問題でしょう。
で、証明を(ずいぶん前に習ったのかもしれないですが忘れていたので)行ってみました。
すぐに、長辺(c)を一辺とする正方形を書いて、他の辺(a,b:b>a)に平行な線を、正方形の頂点から4本書いてできました。
c^2=(4*ab/2)+(b-a)^2=a^2+b^2
こういうのが数学じゃないのか?
暗記ばかりに頼るようでは、創造力も合理的思考も、ダメでしょう。
後でWikipediaで調べて、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%82%BF%E3%82%B4%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%81%AE%E5%AE%9A%E7%90%86
を見つけました。
ずいぶん、色々な証明方法があるものですね。
このような多様性と「一点への集約」(方法は違うが答えは同じ)が数学の面白さの一つかも。
色々な方法が考えられるのです。
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