2008年12月14日日曜日

Dracon's Law: 『正義を探す少年』

2007年10月14日

『正義を探す少年』
書き始め2003年12月7日
更新日2004年10月4日
最終更新日2007年10月13日

ホルムズは、キールズと各地を流浪する中で、不良達にかつ上げされ、リンチされる少年・少女たちと出会い、不良たちを懲らしめ、少年・少女たちに感謝され、喜ぶ。
また、ヤクザに苦しめられる人々に出会い、ヤクザの一団を壊滅させ、苦しめられていた人々に 感謝され、喜ぶ。
そのような中で、人々から"正義の使者"と讃えられたホルムズは、正義のために生きようと決心する。
ホルムズ「おら、"正義"って良くわかんねぇけど、皆が喜んでくれるのはよく分かる。」
人々が助けてもらったお礼にくれた料理をたらふく食べて満足そうにお腹をさすりながら、にんまりと満面の笑みを浮かべながら、キールズは言う。
「じゃあ、世界中の"正義"ってのを探しに行こうぜ。とりあえず、美味い飯にありつけそうだからよ。」

超能力者を見つけ次第、殺してしまう社会で、超能力者達は自分の能力を隠して生き延びていた。
そんな超能力者を抹殺しようとする集団が現れていた。
超能力者に両親を殺され、超能力者抹殺の使命感を帯びる青年ベイルートと、人間に両親を殺されながらも、人間と共生しようとする超能力少女トリオンが恋に落ちる。
ベイルートが超能力者の攻撃によって致命傷を負ったとき、トリオンは自らの超能力、治癒能力を使い、ベイルートを助ける。
トリオンが超能力者であることを知り、動揺を隠せないベイルート。
ベイルートの所属する部隊の長はトリオンを殺そうとするが、ベイルートはトリオンをかくまおうとし、トリオンとともに部隊の追跡から逃れる。
しかし、遂に部隊に掴まってしまう。
部隊の長は、トリオンがスパイだと嘘をつき、ベイルートは何が正しいのかがわからない状況で悩む。
部隊の長はベイルートを脅す。
「まさか、あの超能力者を助けたいのではないだろうな。もしも、そうだったら、裏切者だ。裏切者は、処刑されなければならない。」
トリオンの公開処刑の場に、「正義」を求めるべく各地を放浪していたホルムズがやってくる。
集まった群集は、口々に「正義の名の元に超能力者を処刑しろ」と叫ぶ。
「正義」の名の元に、処刑されそうになっている少女をホルムズはどのように見たのか。

「何故、憎しみ合うんだ!?こんな良い奴じゃないか!」問い詰めるホルムズに、ベイルートは叫ぶ。
「自分の両親を殺しやがった奴を、許すことなんて・・・お前、できるなら、やってみろよ!」
ホルムズ「トリオンが?トリオンがお前の父さんと母さんを殺したのか?」
ベイルート「違う。でも、超能力者が殺したんだ。超能力者達は信用できない。超能力者達は悪い奴らなんだ。俺たちは正義を守るために悪い超能力者達を根絶しないとダメなんだ!」
「トリオンは、お前を助けたじゃないか。お前の言う、"正義"なんて、正義なんかじゃない!」ホルムズが泣き叫ぶ。

「おら、正義ってなんなのか・・わからなくなっちゃったよ。」途方にくれたホルムズが座り込む。
「”正義”って、相手を苦しめて、殺しても良いのか?正義って、人を殺しても良いのか?なぁ、キールズ。」
キールズが困った顔をして、ホルムズを励ます。
「ここまで言ってもさぁ、殺し合いたい奴らなんだから、殺し合って、全部死んだら良いんじゃないのか。
そうすりゃ、人殺しは居なくなって、良い感じになるんじゃないか。
本当は俺たち"化け物"なんかよりも、ずっと似ているのにな。
みんな同じなのにな。痛かったら泣くし、家族が死んだら悲しむし、そして、お互い、助け合って笑い合ったりできる仲間なのにな。トリオンがみんなの怪我を直そうとしているようにさ。」
ホルムズ「トリオンは良い奴だ。おらは、トリオンを助けたい。」
キールズはにんまりと微笑む。「当然だ。やるぞ。相棒!」

<<正義とは何なのか?教育が正しい正義を教えないとどうなるのか。
個々人あるいはグループや社会が持つ正義とは絶対なのか?否。
憎しみ合う集団の両側から両側の事情を描き、読者に両側への愛着を感じさせたい。>>

ホルムズとキールズが処刑されそうになっていたトリオンを助けようとしたとき、ベイルートがトリオンを助けようとして飛び出し、仲間に射撃されて倒れる。
ホルムズとキールズがトリオンとベイルートを助け出し、逃亡する。
息も絶え絶えのベイルートはうわごとのようにつぶやく。
「トリオン、信じてやれなくてゴメン。
やっと分かったんだ。君が超能力者でもスパイでも良い。
僕は君を愛している。
君には生き続けて欲しい。君が死んだら。生きていても、苦しいだけだ。」
トリオンはベイルートを治癒しようと必死に治癒能力を使うが、ベイルートはトリオンの腕の中で息絶える。
追ってきた、超能力者抹殺部隊をぶちのめすホルムズだが、傷ついて失神している追っ手をトリオンは治癒する。
ホルムズは驚きに目をみはる。
「おめぇ、すげぇな。なんで、助けるんだ?悪い奴なんだぜ。」
トリオンは言う。「神様が、世の中には悪い人間なんていないのだと、教えてくださったんです。」
ホルムズ「かみさま?なんだそいつ?えらい奴なのか?おら、会ってみたいな」
ホルムズは少女の言う、宗教教団に信者として入団させてもらうために旅立つ。
しかし、超能力者抹殺部隊によって、ホルムズが寝ている間に、トリオンが射撃されてしまう。
慌てて飛び起きたホルムズとキールズはトリオンにかけより、息も絶え絶えのトリオンの体を揺さぶる。
「トリオン、自分を治癒すれば良いじゃないか。」ホルムズが必死に話しかけるが
トリオンは首を降る。「自分は治癒できないの。」
ホルムズ「嫌だ。トリオン。死ぬな。みんなでかみさまに会いに行くって約束したじゃないか。」
死ぬ間際のトリオンが言う。
「ホルムズ。わたしはもうダメ。でも、お願い。こんな馬鹿な殺し合いが、そして、殺される人が居ない世の中を作って。誰も殺し会わない、そしてみんな笑って生きられる世の中を・・・。」
キールズは懸命に自分の知識の限りを尽くしてトリオンの介抱をしていた。
「ちくしょう。ダメだ。死んじまう。なんでだよ。なんで。こんな良い奴が。かみさま、居るんなら、出てきてトリオンを助けやがれ、この能なしが!」
ホルムズの腕の中でトリオンの体が突然軽くなり、トリオンの目が閉じる。
ホルムズは泣き叫ぶ。
「どうしてこんなに簡単に死んでしまうんだ。起きてくれ、生きているって言ってくれよ!」ホルムズは涙が枯れるまで泣いた後、叫ぶ。「ちくしょう。トリオンを撃ちやがった奴め!ぶっころす!」
キールズはホルムズを止める。「止めろ、トリオンだって言ってただろ!殺し合いの無い世の中を作ってくれって!」
ホルムズは首を横に降る。「トリオンを殺すなんて、許せるか!許せるわけないだろ!」
キールズはホルムズの頬をぶったたく。「馬鹿やろ!お前、言ってただろ!ベイルートに。何て言った?!お前も、殺されたから許せないのか?そんなら、ずっと殺し合いが続くだけだろ!」
泣くホルムズをキールズは抱きしめる。
「俺だって、憎いさ。でも、トリオンは『憎むな』って、言ってた。トリオンを泣かすわけにはいかない。」

キールズは言う。「トリオンの行ってた、かみさまに会いに行こう。きっと、殺し合いの無い世の中を作る方法を知ってるはずだ。」

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